| ◆『ブラック・ダリア』(2006/ブライアン・デ・パルマ)鑑賞雑感 |
こんばんは、ダーリン/Oh-Wellです。 さてさて、11月も残すところ1日と数分^^ほど……。 今月の目標だった10エントリーは厳しくなって来たかなぁ~(笑) ―さて、 前回のエントリーでは、この9月以降に鑑賞した新作公開映画10本ほどを4つの区分の中に当てはめてみた訳なのですが、そこでもって「僕なりに多少の不満はあるものの最初から最後まで面白くは観れた作品」として置いたのが、我らが^^デ・パルマの『ファム・ファタール(2002)』〔◆当ブログ内鑑賞メモ◆IMDb〕以来4年ぶりの新作となった『ブラック・ダリア』〔◆当ブログ内鑑賞直前メモ◆IMDb〕。 ※ネタバレ注意 本作は、僕に取っては、先述したように、「僕なりに多少の不満はあるものの最初から最後まで面白くは観れた作品」ではあり、しかし、「その醍醐味なり、美点なりをひと括りには言い表しにくい」映画とも為っています。 ![]() また、僕に於いては、例えば、一週間と空けずに二度目を観に映画館に足を運びたくなるようなデ・パルマ映画ではなかったものの(―まぁ、私め、『殺しのドレス』(1980)以降の大概のデ・パルマの新作はロードショー期間中に二度は観に行っている訳です)、勿論、劇場公開が終了してしばらくして名画座にでも掛かれば再鑑賞しに行きたいですし、DVDヴィデオなりでも時おり再鑑賞して行くことにはなるでしょう。 つまり、鑑賞を二度、三度と重ねて、徐々に、この映画の濃密さ(※原作者のジェイムズ・エルロイ曰く、「この映画は私の本を見事に圧縮している」「ほとんどドイツ表現主義版の『ブラック・ダリア』という印象さえある」~本作の劇場パンフレットから引用)を妙味として受け止めて行ける映画だと僕は思っている次第です。 ![]() もう、素直に感心する部分も多く、一方で、デ・パルマ・ファンとして物足りなく思えてしまう部分も少なからずあります。そう…、体を真っ二つに切断されてL.A市内の空き地に打ち捨てられた≪“ブラック・ダリア”=エリザベス・ショート≫の死体ではありませんが、一度観た限りでは、僕の中で一つの穏やかなと言うか、そう、明瞭な印象に収まって行かなかった訳です。この、不穏なものが残って行く映画ぶりは、勿論、この未解決猟奇殺人事件を題材に扱ったものゆえの必然でもあるのでしょう。 ![]() ともかく、長年に亙ってデ・パルマ映画というものを享受して来た者の一人としては、素朴にわくわくと目を瞠り素直に感心できたところすら書き残して置かぬこともまた健全なことには思えませんので^^、今回のエントリーでは、『ブラック・ダリア』を観て、今、思うところを大まかに書きとめておきます。 まず、本作には、大概のデ・パルマ映画に巧まずして備わって来るような、如何わしいながらもファンとしては心地よく耽溺してしまえるような、デ・パルマが自らの腕(技巧)を存分に嬉々と^^ふるっての、云わば、映像ギミック的なもの目映さなり、品位などと云ったものとは少々無縁ながらもデ・パルマ独自の艶っぽい映像イメージというものを然程享受出来ぬところが在って、主としては、こんな部分ゆえに僕は初鑑賞の際には存分に本作を堪能出来なかったのでしょう。 まして、この事件を扱ったジェイムズ・エルロイ渾身の長編小説(―私め、今週始めより本書を読み始めていて、まだ、端的にその内容なりを言い表すことは出来かねるのですが、幾つかの書評や解説にあるような「…10歳の時に母親が何者かに殺された上、その事件が迷宮入りとなったことで深いトラウマを負った著者は11歳の時に彼自身が生まれる前年に起こった“ブラック・ダリア殺人事件”に取り憑かれる。そして、母親の死から7年後に父親も他界。孤児となったエルロイの人生は堕落の一途を辿る。……中略……そして、デヴュー作から7作目にして遂に母親への屈折した思いを重ね合わせる中にブラック・ダリア事件を扱った重厚な犯罪小説を完成させる」とでも云ったところは本書を一つには言い表しているかと思います)を原作に持つ映画製作の中では、好き勝手、やりたい放題が出来る訳も無かったということに尽きると捉えても良いのでしょう。 この部分に於いてのデ・パルマなりの慎み(―端的にひとつを言えば、“ブラック・ダリア”に何らかの兇器がふるわれての流血場面というものが無いことにもそれを感じました)や悲劇のヒロイン“ブラック・ダリア”に向ける哀れみと云うものには、僕なども、一方為らぬ感慨を抱くところであります。 また、デ・パルマ贔屓の僕には珍しいことなのですが、本作に於いては、キャスティングの一部に然程説得力を感じ取れぬところと相成りました。そんな中で、最も目を瞠らされたのは、“ブラック・ダリア”ことエリザベス・ショートのキャラクター造形。デ・パルマは、この悲劇のヒロインにミア・カーシュナーを得ることで、このヒロインに愈々意欲を持って迫ることと相成ったのではないかと僕なりに感じ取れました。 ![]() 殊に、映画中映画としてある内の一つ、エリザベス・ショートのオーディション・フィルムの中でもっての、スターを夢見るヒロインに迫って行く姿無き監督の視点の元に映し出されるヒロインの健気、哀感が相伴って見て取れる姿、ヒロインに問いかけ演技指示を出す監督の声(※その、低めの存在感ある声はデ・パルマ自身によるもの)共々によるどこか微笑ましくもあり如何わしくもあるこのオーディション・フィルムの映像は、 ハリウッド・スターを夢見てL.Aにやって来たものの身を持ち崩し、果ては何者かに惨殺された、この悲劇のヒロインの生前の姿に観客個々が思いを及ぼしてゆく拠り所として大いに機能しているかと思え、その後に示されるポルノ・フィルム中の遣る瀬無くキャメラに納まっているヒロインの姿と表情には哀れみを寄せずには居られなくなりましたし、そして、納屋の中で愈々殺人鬼の手に掛かってしまう姿には、過去のデ・パルマ映画にあるような流血場面を含めたデ・パルマ独擅場のショッカー演出などはされていないにも拘らず、愈々目を背けたくも為ってしまいました。 ともかく、登場シーンからして既に死体であるこのヒロインは、主人公たる“バッキー”(ジョシュ・ハートネット)が捜査過程で見ることと為る二つのフィルム(オーディション・フィルム、ポルノ・フィルム)の中、そして、回想映像として示される中にしか居ない。登場人物中、唯一、現在という時制の中には描かれない…。 ―ここの部分は、当時のロス市警が総力を挙げ捜査したにも拘らず加害者(犯人)逮捕、事件解決に到達できなかった本事件の持つ闇、もどかしさの反映としてあるとも言えそうです。 そして、件の二つのフィルム中のオーディション・フィルムに於いては、或いは、デ・パルマはミア・カーシュナーを持ってして、エリザベス・ショートの銀幕デヴューを密やかに叶えてあげたのではないかとも僕なりに受け止めてもいます。 ![]() さて、ミア・カーシュナー扮する“ブラック・ダリア”ことエリザベス・ショートに加えて、僕が本作で目を瞠ったところを挙げておきますと、 ひとつには、矢張り、映画の要所に見て取れるデ・パルマならではのキャメラ・ワークの妙。 殊に、あの、 “ブラック・ダリア”の惨殺死体が初めて映画中で示されるショットを含むシークェンス。おそらくは、朝方のまだ人気の無い通り沿いに建つ一つのビルを捉えたキャメラはゆっくりと高く舞い上がって行きビルの向うの空き地とそこに打ち捨てられた死体をロングで見せる、キャメラは、一旦、ビルを回り込んでビル手前の通りに舞い戻って来、別のエピソードを示した後に、ビルの中を移動しビル向うの死体を見遣る刑事たちへと寄って行く…。この、二つのエピソードに跨っての一連のクレーン撮影、長回し、移動撮影にあるスリリングかつダイナミックなキャメラ・ワークはデ・パルマと撮影監督ヴィルモス・ジグモンドが本作でものにした最大の見せ場ではないかと思います。 ![]() また、主人公の相棒刑事たる“リー”(アーロン・エッカート)が何者かにナイフで斬り付けられる場面を含む、階段とその吹き抜けを舞台装置にした如何にもデ・パルマ独擅場の演出が効を奏しての「墜落」に締め括られるシークェンス等に於けるキャメラ・ワーク、そして、忍び寄る魔手の影の強調などにも、デ・パルマならではの視覚的ケレン味が迸(ほとばし)っていたかと思い起こします。 さらには、主人公によって、『笑ふ男』(1928/パウル・レニ)という、かつて“リー”、ケイ・レイク(スカーレット・ヨハンソン)と一緒に映画館で観たサイレント映画の一場面中の背景セットと、先述したポルノ・フィルムのセットの一致が見つけられて行くあたり、そして、そのセットのある某所に足を踏み入れた主人公が、愈々、殺害の核心へと迫って行くあたりの濃密さも忘れがたい…。 ![]() これら以外にも、幾つか心惹かれた部分はあるのですが、再鑑賞して確認してから、いずれ書き加えてみることと致します。 斯様に、僕に取っては、必ずしもデ・パルマらしさが全開したとは感じ取れぬ本作では有った訳ですが、まぁ、これまで、然程には原作ものの映画化を手掛けることは無かった(―例えば、『キャリー』(1976)、また、『カリートの道』(1993)などは、原作ものでのデ・パルマ演出による映画化での成功例かと思います)デ・パルマに取っての意欲的なチャレンジとも言えるかと思いますし、デ・パルマたるタフな映画監督が、これを持って精根尽き果てた訳でも無いでしょうし^^、今後も『殺しのドレス』(1980)、『アンタッチャブル』(1987)、『ミッション:インポッシブル』(1996)等々のようにデ・パルマ・ファンを満足させつつ更に多くの映画ファンを引き込んで驚喜させ大ヒットを勝ち取る^^ような映画をものにしてくれるものと、まぁ、僕などは素朴に思え期待している次第です。 |
by oh_darling66
| 2006-11-29 23:54
| ■映画鑑賞メモ/鑑賞プチ・メモ
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