■〔映画評Vol.15〕『Mr.インクレディブル』(2004/ブラッド・バード) |
こんばんは~ この8月最後の日も残すところ後10分ほど、 おそらくは...8月最後のエントリーとなりそうです!((^^) *** さて、映画好きとしての自分自身を顧みて、 つい数年前までは特に好んで鑑賞することもなかった、しかし、現在では劇場鑑賞映画を選ぶ際、また、映画ソフトのレンタルや購入の際などに意識することの多くなった映画のジャンルが二つほどあります。 一つはドキュメンタリー映画であり、もう一つはアニメーション映画です。 後者のアニメーション映画に俄然僕の興味が向く契機となったのは、『ファインディング・ニモ』(2003)の劇場鑑賞でした。 その後、主にピクサー(>PIXAR公式サイト)作品を中心に『ファインディング・ニモ』から制作年を遡(さかのぼ)って何作品かいわゆる3DCGアニメーションを鑑賞した訳ですが、『モンスターズ・インク』(2001)あたりにも思いの外感銘を受けましたねぇ…。 そして、ピクサー映画2本目の劇場鑑賞と為った『Mr.インクレディブル』(2004)との出会いで、愈々(いよいよ)アニメーション映画は僕に取って映画の一ジャンルとして存在の大きなものと相為った次第です。 今回は、この2005年、僕が最初に映画館で鑑賞した映画でもある『Mr.インクレディブル』について、僕が以前に纏(まと)めたものをお披露目いたします。 ヒーローの再起に重ねられる正義の模索 ***ネタバレ注意 映画は、Mr.インクレディブルを始めとするスーパーヒーローたちへのインタビューで幕開き。 「世を忍ぶ仮の姿ってあるの?」と尋ねられる主人公は、「24時間働き尽くめって訳じゃないさ」「時々、平凡な生活に憧れるよ、子供を育てるとかね」等と答える。 イラスティー・ガールの受け答えも印象深い。 ここで彼女は「平凡な生活に憧れない?」とでも尋ねられるや、「まっぴらだわ、男だけに平和を守らせておく訳には行かない」等と口にする。 何にせよ、彼らの余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)ぶりが印象的だ。 *** 映画は主人公のMr.インクレディブルが街中で悪党を追い始めるシーンに続く。 武装した悪党の車を難無く取り押さえた主人公は、新たな事件の情報を得て愛車に乗り込む、と、そこにはインクレディブル・ボーイと名乗るスーパー・ヒーロー的コスチュームを身に纏ったバディなる少年が。 「僕にも手伝わせてよ」等と煩(うるさ)いバディを主人公は愛車から放り出す。 しかし、Bomb Voyageなる爆破強盗を取り押さえんとする主人公の前にバディは再び姿を現し「僕は最高の相棒だろ?」と力添えしようとする、そんなバディに主人公は「手を出すんじゃない」等と一喝…。 ―その晩、主人公とイラスティ・ガールは教会で結婚式を挙げる…。 *** さて、主人公は高層ビルから飛び降り自殺を試みた男を救済したことが身の仇(あだ)となる。 命を取り留めた男が「Mr.インクレディブルの所為(せい)で自殺が叶わず、却って怪我の後遺症で苦しんでいる」等と主人公を起訴、 その後、スーパーヒーローたちの活躍に伴う甚大な器物破損等に対する訴訟が相次ぎ、主人公等は国家によって所謂ヒーロー活動を禁じられ、政府機関の監察下で一般的な市民生活を送る事を余儀なくされるのだ。 Mr.インクレディブル/ボブ・パーとその妻となったイラスティ・ガール/ヘレン・パーの市井に身を置いてからの姿は対照的だ。 保険会社に勤務する主人公は顧客本位のサーヴィスをする余り却って上司に責められるような組織生活に鬱積を募らせて行き家庭でもどこか虚ろだ。 一方のヘレンは3人の子を育てる母親としてしっかりと地に足がついている。 夫婦の子供たちも印象深く描かれ、その生まれ持つ超人能力を抑圧されているが故の個々の屈折が映画に厚みを加えて行く。 まだ乳飲み子のジャック・ジャックは措(お)くとして…、長女のヴァイオレットは自らの超人能力を負い目に感じるが故に極めて内向的であり、一方、彼女の弟ダッシュはその超人的な運動能力を学校等で発揮することを禁じられ不満が鬱積している。 これら映画序盤ほどまでに描かれた主人公とその家族、延(ひ)いては、スーパーヒーローたちの云わば負の部分こそが、主人公等がスーパーヒーローとして再起して行く映画後半から終幕に架けて爽快なカタルシスをもたらす縁(よすが)となる。 *** 本作最大の悪役として描かれるのは“シンドローム”と名乗る件のバディ。 あの少年時代の失意から十数年後、火山島に基地を置きスーパー・ヒーロー抹殺を重ねる彼はMr.インクレディブルをも凌ぐ力を纏う事と為る。その魔手は遂にはMr.インクレディブルに伸びる…。 ……(中略)…… ヘレンは、かつてはスーパー・ヒーローが身に纏うコスチュームのデザインを一手に引き受けていた、現役カリスマ・デザイナーたるエドナ・モードのオフィスで夫の所在を知る。 夫の身を案じたヘレンは、ジェット機を操縦しシンドロームの基地がある火山島に向かう。 途中、ヘレンはジェット機に隠れ乗っていたヴァイオレットとダッシュを見つけるも、叱る間もなくジェット機はミサイル攻撃に遭い3人は命からがら火山島に上陸する。 真夜中、ヘレンは子供たちを残し一人夫を救いに件の基地へと向かう。 その翌朝、子供たちは敵陣営に見つかり必死に逃げ生き延びんとする訳だが、 まさにここに於いて、スピード感ほとばしる本作最大のアクション・シークェンスが出現する。 そして、この必死さの中で、市井にあっては全てを窺い知れなかった超人能力の底力を子供たちが自覚し(―ヴァイオレットは半ばおののきながら、ダッシュは歓喜を以って)受け止めて行く姿こそが、さらに、家族が結束して敵陣に立ち向かってゆく姿こそが、僕にとっては本作最大の映画的醍醐味に通じるものとなる! *** 特筆すべきは、スクリーン上に生き生きと輝くイラスティ・ガール/ヘレンの存在。 吹き替えをしたホリー・ハンターが文字通りヘレンに命を吹き込んでいよう。 ヘレンは、かつては平凡さを否定していたものの、結婚後には主婦、母親として家庭生活を健気に支えて行く。その快活で可愛らしい彼女のキャラクター性は本作の最大の求心力だと思う。 多くに触れる余裕は無いが、シンドロームは自らが造り上げた戦闘ロボットを火山島から大都会に放ち大暴れさせたのちにスーパーヒーローの如く市民を救いに姿を現わす、云わば、偽りの正義たるものとして描かれる。 彼は束の間市民から喝采を浴びるものの、主人公家族の結束の前に自滅して行く。 劇中、旧態依然たるスーパー・ヒーローのシンボルとして示されていたマントがバディ/シンドロームにとって身の仇となる辺りには、疲弊したアメリカ的正義への訣別が託されてもいるのだろう。 余談) ―さて、 残念ながら、上記に掲載した本文中で触れる事は叶わなかったのですが、 我が贔屓俳優の一人たる、サミュエル・L・ジャクソンが声を担当したフロゾン(※左Ph)という劇中キャラクターも僕に取っては忘れ難いものですし、劇中にとっぽい大人の妙味を加えている大切なキャラクターだと僕は思えています。 この主人公の長年の友人たるフロゾンは、終幕に於けるインクレディブル一家とシンドロームが放った戦闘ロボットとの市街戦対決でも、何と云うか、スーパー・クール…((^^)な助太刀を見せてくれる…。 ―まぁ、映画評/感想などと云うものも、取り上げたい要素の内の幾つかを切り捨てなくては形に為りませんからねぇ…、ジャクソンのファンとしてもフロゾンのファンとしても少々心残りではあった訳ですが、斯様な次第で今回のエントリーでフロゾンを取り上げる事は諦めました~。(^^) 〔※本エントリーは、以下のサイトともリンク中〕 ** Mr.インクレディブル@映画生活 |
by oh_darling66
| 2005-08-31 23:56
| ■ 映画評
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